脳神経外科
概要・方針
当院脳神経外科は昭和57年に開設され、知多半島の中核病院として皆様の診療にあたってきました。当科では、脳卒中、脳腫瘍、頭部外傷をはじめとする脳神経疾患全般に対し、従来からの開頭手術等の脳神経外科手術に加えて、カテーテルによる脳血管内手術や定位放射線治療も、早くから行ってきました。
2017年2月のSCU(脳卒中センター)開設以降、24時間365日間、脳神経外科医か神経内科医が常駐することになり、急性期脳梗塞の根治治療となりうる経皮的血栓回収療法にとくに力を入れています。2025年の病院移転に向けて、知多半島の中核病院としての役割はさらに大きくなる見込みであり、診療体制、内容のブラッシュアップに努めてゆきます。
2017年2月のSCU(脳卒中センター)開設以降、24時間365日間、脳神経外科医か神経内科医が常駐することになり、急性期脳梗塞の根治治療となりうる経皮的血栓回収療法にとくに力を入れています。2025年の病院移転に向けて、知多半島の中核病院としての役割はさらに大きくなる見込みであり、診療体制、内容のブラッシュアップに努めてゆきます。
診療内容と特色
脳血管障害 | くも膜下出血(脳動脈瘤破裂)、未破裂脳動脈瘤、脳出血、脳梗塞(脳血栓、脳塞栓)、脳動静脈奇形、脳動脈・頚動脈狭窄・閉塞症、硬膜動静脈瘻など |
頭部外傷 | 急性硬下血腫、急性硬膜外血腫、慢性硬膜下血腫、脳挫傷など |
脳脊髄腫瘍 | 神経膠腫、髄膜腫、下垂体腫瘍、神経鞘腫、下垂体腫瘍、転移性脳腫瘍など |
水頭症 くも膜嚢胞 小児脳神経疾患 |
|
機能脳神経外科 | 三叉神経痛、顔面けいれん |
脊椎・脊髄疾患 | |
その他 | 髄膜炎、頭痛、めまい、パーキンソン病、てんかん、痴呆症など |
脳ドック |
- 2017年2月、県内2か所目となる脳卒中センター(SCU)施設認定を受けました。脳神経外科医ないし神経内科医が24時間365日院内に常駐しています。脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)患者はもちろん、重症頭部外傷患者やその他の脳神経疾患に対しても、今まで以上に迅速な対応が可能になっています。
<脳動脈瘤に対する手術治療>
- 脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血症例や未破裂脳動脈瘤に対しては、1)開頭クリッピング手術(動脈瘤にクリップをかけて処置する)か、2)血管内治療による脳動脈瘤塞栓術(マイクロカテーテルを脳動脈瘤まで導入し、マイクロコイルで血管の中から動脈瘤をつめる)を行っています。それぞれの手技の専門医師によるカンファレンスを行い、ご本人、ご家族のご意向をふまえて、どちらの治療を行うかを決定しています。
<脳出血に対する治療>
- 中等量以上(血腫量約30ml以上)の症例については、発症間もない時期(急性期)に、開頭術、あるいは神経内視鏡を用いた(小さな骨孔からカメラを入れて行います)血腫除去術を検討する必要があります。術後はできるだけ早期から、リハビリテーションを行います。血腫量が少ない症例に対しては、血圧、脳圧コントロールを中心とした保存的内科治療を行い、やはりできるだけ早期からリハビリテーションを行います。
<急性期脳梗塞(脳血栓症、脳塞栓症)の治療>
- 発症4.5時間以内であれば、t-PA静注療法を行うことができます。この治療法には、種々の制限があり全ての患者さんに対して行える治療法ではありませんが、脳梗塞の原因である脳血栓、脳塞栓を溶解することができますので、従来の脳梗塞の進行を妨げる目的の内科的治療とは異なり、根本的な治療が可能となりました。
このt-PA静注療法が無効であった症例に対して、当院では専門医師が常駐しているメリットを生かし、積極的に経皮的血栓回収療法を行っています。これは、ステントレトリーバというカテーテルを用いて血栓、塞栓を絡めとる治療法です。とくに塞栓症に対して有効とされており、脳梗塞の原因そのものを除去できる根治治療ということになります。この治療については、現在も適応拡大に向けた研究が全世界規模で進行中であり、我々も非常に可能性を感じています。
<脳梗塞症例に対する(慢性期)血行再建術>
- t-PA静注療法や機械的血栓回収療法は根治治療なのですが、すべての患者さんに行える訳ではありません。また、これらの治療を来なっても再開通がえられない症例もあります。実際、急性期脳梗塞の患者さんは点滴治療、リハビリテーションで対応することが多くなります。しかし、頸部頸動脈や頭蓋内主要血管の狭窄/閉塞症例において、急性期(発症後約10~14日)を軽微な神経症状で乗り越えられた場合、今後の脳梗塞再発を予防する目的で、血行再建手術を行うことができます。脳血管撮影と脳血流検査(SPECT)で、脳梗塞に陥っていない“血流不足”の領域(ペナンブラ)がある方が対象になります。ペナンブラに血流再開が得られれば、脳梗塞を予防でき、麻痺などの症状が不安定な場合改善する可能性があります。
頸動脈狭窄症に対しては、頸動脈内膜剥離術(Carotid endoarterectomy:CEA),頸動脈ステント留置術(Carotid artery stenting:CAS)を行います。CEAは全身麻酔下の手術であり、CASは局所麻酔下で可能な血管内手術です。
閉塞症例であっても、ペナンブラが確認されれば、全身麻酔下で中大脳動脈-浅側頭動脈バイパス術(STA-MCA anastomosis)を行います。これは耳の前で拍動している浅側頭動脈を、脳表の動脈に吻合する手術です。脳表の血管は1mmに満たない場合もあり、脳神経外科の中で最も繊細かつ精巧さを求められる手術ですので、当院では練習用顕微鏡、手術顕微鏡を用いて、スタッフが常に訓練可能な体制を整えています。
このように、CEA,CAS,STA-MCAバイパス術は、脳梗塞の発症の如何に関わらず、先に述べたペナンブラがあれば、手術適応があります。我々は、脳卒中の治療はもちろん、手術適応のある患者さんを見つけることにも同等に力を注いでいます。
<脳卒中急性期リハビリテーション>
- 脳卒中が「ちゅうき」と呼ばれていた頃は、脳卒中急性期のリハビリテーションはタブー視されており、絶対安静が基本とされていたようですが、今日では「できるだけ早期から、できる範囲」でリハビリテーションを行うことが大原則であり、機能予後改善には欠かせないと考えられています。当院でも、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(それぞれPT,OT,STと略します)が、急性期よりリハビリテーションを担当し、成果を挙げています。医師、看護師、リハビリスタッフ、医療ケースワーカーなど多職種で連携しています(このチーム体制をSU:stroke unitと呼びます)ので、それぞれの患者さんにとって最良の方向性を提案することができます。これは、脳卒中以外の患者さん(脳腫瘍、頭部外傷)にも当てはまります。
<脳腫瘍>
- 基本的には顕微鏡下に開頭腫瘍摘出術を行っています。全摘出による症状改善を目的とする場合と、治療方針を確定するための病理診断確定を目的とする場合があります。下垂体腫瘍に対しては、経鼻内視鏡下手術(鼻腔内粘膜を切開し、カメラを入れて行います)を行っています。
病理診断の結果、化学療法や放射線治療を要する場合は、名古屋大学付属病院脳神経外科脳腫瘍グループの治療指針に基づいて治療しています。悪性脳腫瘍に関しては同教室と共同研究を行っています。
手術治療による治癒が望めない腫瘍に対しては、放射線科医と連携し、定位的放射線治療(最新の治療用コンピューター機器にて正確に計測した腫瘍部位にX線を狙い撃ちすることで縮小させる治療)を積極的に行っています。多発性転移性脳腫瘍、言語野や運動野など重要な機能を有する箇所や、手術での到達が不可能な場所にある脳腫瘍が対象となります。従来の全脳照射という方法に比べて、認知症発生などのリスクは低いとされています。また、脳脳動静脈奇形など脳血管障害に対しても有効な場合があります。ただし、“ガンマナイフ”とは異なりますので、“ガンマナイフ”治療が必要な症例は、他の関連病院を紹介させていただきます。
主な治療対象
- 脳動脈瘤、脳動静脈奇形、頚動脈海面静脈洞瘻、硬膜動静脈瘻:塞栓術
- 急性期脳動脈閉塞:血栓溶解術
- 頭蓋内脳動脈狭窄、頚動脈狭窄、椎骨動脈狭窄:血管拡張術
- 血管豊富な脳腫瘍、頭頚部腫瘍:手術前の塞栓術
- その他、難治性鼻出血など
スタッフ紹介
役職 | 氏名 | 専門医・認定医・指導医 | 医師資格取得年 |
院長 | 渡邉 和彦 |
|
平成3年 |
副医務局長 | 島戸 真司 |
|
平成10年 |
部長 | 太田 慎次 |
|
平成21年 |
医長 | 加藤 直毅 |
|
平成25年 |
医師 | 佐久間 貴史 | 平成30年 | |
医師 | 廣瀬 恭兵 |
|
令和4年 |
診療実績
疾患別頻度
令和4年度 | 令和5年度 | |
脳腫瘍 | 29 | 42 |
破裂脳動脈瘤 | 41 | 38 |
未破裂脳動脈瘤 | 46 | 51 |
脳出血 | 131 | 142 |
閉塞性疾患 | 334 | 344 |
頭部外傷 | 145 | 175 |
脊椎脊髄疾患 | 0 | 0 |
水頭症 | 37 | 42 |
感染症 | 4 | 6 |
てんかん | 30 | 24 |
硬膜動静脈瘻 | 3 | 4 |
その他 | 35 | 28 |
合計 | 835 | 896 |
手術等症例件数
令和4年度 | 令和5年度 | ||
脳腫瘍 | 摘出術 | 20 | 21 |
その他 | 1 | 2 | |
脳血管障害 | 破裂・未破裂脳動脈瘤クリッピング術 | 37 | 34 |
脳動静脈奇形摘出術 | 1 | 1 | |
頚動脈内膜剥離術 | 13 | 9 | |
バイパス術 | 8 | 22 | |
脳内出血開頭血腫除去術 | 20 | 8 | |
内視鏡下脳内血腫除去術 | 1 | 2 | |
外傷 | 急性硬膜下血腫開頭血腫除去術 | 6 | 11 |
急性硬膜外血腫開頭血腫除去術 | 1 | 3 | |
慢性硬膜下血腫穿頭血腫除去術 | 98 | 87 | |
水頭症 | 脳室シャント術 | 47 | 35 |
機能的手術 | 三叉神経痛、顔面痙攣に対する脳神経減圧術 | 6 | 1 |
その他 | 脳梗塞等に対する減圧開頭術 | 8 | 0 |
頭蓋形成術 | 12 | 7 | |
髄液漏閉鎖術 | 3 | 1 | |
気管切開術 | 3 | 0 | |
その他の手術 | 7 | 11 | |
試験開頭術 | 1 | 0 | |
脳室ドレナージ術 | 8 | 6 | |
血管内治療 | rt-PA 静注療法 | 3 | 7 |
血栓回収療法 | 38 | 42 | |
血管塞栓術 | 24 | 21 | |
頸動脈ステント留置術 | 8 | 12 | |
脳血管造影(DSA) | 110 | 141 |
主な医療機器
- CT:2台(320 列×1台、64列×1台)
- MRI:2台(1.5T×1台、3T×1台)
- 血管撮影装置(DSA、flat panel detector採用、バイプレーン方式)
- 脳血流シンチグラム(SPECT,dual table法にて定量)
- 脳外科手術用顕微鏡
- 神経内視鏡
- 超音波メス
- ドップラー血流計
- ナビゲーションシステム
その他
- 当科では、できるだけわかりやすく病状や治療方針の説明をいたすよう努めています。
また、重症患者さんや術後管理を厳重に必要とする場合は、集中治療室で管理をして行きます。さらに看護師、理学療法士と協力して、早期離床をはかっています。 - 当院では、「日本脳神経外科学会データベース研究事業(Japan Neurosurgical Database:JND) 」及び「国立循環器病研究センターデータベース研究事業(J-ASPECT Study)」に協力しています。 2018年1月から、当院脳神経外科に入院された患者さんの臨床データを解析させていただき、 脳神経外科医療の質の評価に役立てることを目的としています。 解析にあたり、JND及び、J-ASPECT Studyに提供するデータは、提供前に個人を特定できない形に加工した上で提供しますので、 患者さん個人のプライバシーは完全に保護されます。
本研究の解析にご自身のデータを使用されることを拒否される方は、その旨を当科統括部長までお申し出ください。 その他研究事業について、資料閲覧を希望される方は、研究班ホームページをご参照ください。